ドッグフードに含まれる脂肪、どのくらいが適正なのか気になったことはありませんか?
脂肪は、犬にとってエネルギー源としても皮膚や被毛の健康維持にも重要な栄養素です。とはいえ、摂りすぎれば肥満や膵炎などのリスクもあるため、適切な量を見極めることが大切です。
この記事では、まず最初に「どれくらいの脂質量が理想なのか?」という基準値を紹介し、そのうえで脂肪の働きやリスク、フード選びのポイントまでわかりやすく解説していきます。
脂質は犬の健康を維持するうえで欠かせない栄養素ですが、摂りすぎても不足しても不調の原因になります。何%が適正なのか、どのくらい与えるべきかを知っておくことは、健康管理や病気予防の第一歩です。
フードを選ぶ前に、年齢や体格に合わせた脂質量の基準を把握しておきましょう。
AAFCO(米国飼料検査官協会)では、犬のライフステージに応じた最低限の脂質量が定められています。成犬用の総合栄養食であれば最低8.0%、子犬用では8.5%以上が必要とされています。
ただしこれはあくまで「最低基準」であり、活動量が多い犬や寒冷地で暮らす犬では10~15%が理想とされるケースもあります。
犬の脂質の必要量は年齢や体重、活動量によって大きく異なります。一般的な成犬では10~15%、シニア犬や運動量が少ない小型犬では8~12%が目安です。
一方、子犬やスポーツドッグでは15%以上が必要になる場合もあります。肥満や病中犬では低脂肪設計が適しているため、個別の状態に合わせた調整が大切です。
脂肪というと「太る」「控えたい」といったイメージを持つ方もいるかもしれませんが、犬にとって脂肪は欠かせない重要な栄養素です。
エネルギー源として体を支えるだけでなく、皮膚や被毛の健康、ホルモンバランスの維持など、健康に深く関わっています。適切な脂肪の摂取は、愛犬の元気な毎日を支える大切な土台になります。
脂肪は、たんぱく質や炭水化物よりも高いエネルギー密度を持ち、犬にとって非常に効率の良いエネルギー源です。特に運動量の多い犬や、寒冷地で生活する犬、授乳中の母犬、成長期の子犬などでは、脂肪の摂取が必要不可欠になります。
脂肪は消化吸収にも時間がかかるため、持続的なエネルギー供給源としても優れています。
脂肪に含まれるオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸は、皮膚や被毛の健康維持に重要な役割を果たします。
不足すると乾燥やかゆみ、被毛のパサつきなどのトラブルが起きやすくなりますが、適切な量の脂肪を摂ることで、肌のうるおいや毛艶を保ちやすくなります。とくに皮膚トラブルを抱えやすい犬種では、脂肪の質と量の両方に注目することが大切です。
犬が体内で合成できない脂肪酸は「必須脂肪酸」と呼ばれ、オメガ3(DHA・EPA)やオメガ6(リノール酸など)がこれにあたります。
これらは免疫調整、抗炎症作用、皮膚の再生など多くの働きを担っており、日常的に食事から摂取する必要があります。バランスよく取り入れることで、健康維持はもちろん、アレルギーや皮膚疾患のケアにもつながります。
脂肪は必要な栄養素ですが、過剰に摂ることで肥満や膵炎などの健康トラブルを招く恐れがあります。特に運動量の少ない犬や代謝の落ちたシニア犬では、脂肪の摂取量が体調に大きく影響します。
知らず知らずのうちにリスクを高めないよう、注意すべきポイントを確認しておきましょう。
脂肪はカロリーが高いため、少量でもエネルギー過多になりやすい栄養素です。運動量が少ない犬や食欲旺盛な子に高脂肪のフードを与え続けると、体重増加につながり、肥満になるリスクが高まります。
肥満は単なる体型の問題ではなく、関節への負担や心臓病・糖尿病などの慢性疾患の引き金になるため注意が必要です。
また、脂肪の過剰摂取によって消化不良を起こし、下痢や嘔吐を繰り返すケースもあるため、愛犬の体調に合わせた脂肪量の調整が大切です。
脂肪の摂りすぎが引き金になる病気のひとつが膵炎です。膵炎は膵臓が自分自身の消化酵素によって炎症を起こしてしまう病気で、高脂肪食がきっかけになることがあります。特に小型犬やシニア犬では注意が必要です。
また、高脂血症(血中の脂肪濃度が高くなる状態)も、脂肪の多い食事を長期的に続けることで起こりやすくなります。これらの病気を予防するためにも、脂肪の量だけでなく質やバランスを意識した食事選びが重要です。
心臓病の犬にも低脂肪・減塩の食事が有効とされています。詳しくは心臓病ケア向けフード特集をご覧ください。
脂肪はそれ単体で摂ればよいというものではなく、たんぱく質や炭水化物、ビタミン・ミネラルとのバランスがとても重要です。栄養素同士がうまく機能し合ってこそ、愛犬の健康が保たれます。
脂肪とたんぱく質は、犬の体づくりにおいて主軸となる栄養素です。脂肪がエネルギーを供給し、たんぱく質が筋肉や臓器、皮膚などの材料になるため、どちらか一方に偏ると体のバランスが崩れてしまいます。
特に、脂肪の割合を減らしたフードでは、その分たんぱく質が増える傾向がありますが、過剰なたんぱく質が腎臓に負担をかけるケースもあるため注意が必要です。
ライフステージや体調に合ったバランス設計のフードを選ぶことが、健康維持のカギとなります。
たんぱく質は脂肪と同様に、犬の健康に欠かせない栄養素です。割合が増えることでの影響や適正量について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
➡ ドッグフードに含まれるたんぱく質の役割と必要量 >>
脂肪と炭水化物は、どちらもエネルギー源として機能しますが、消化や吸収、代謝のされ方が異なります。
脂肪の摂取量を控える場合には、炭水化物の量が相対的に増えることもあるため、質の良い原材料(玄米やサツマイモなど)を選ぶことがポイントです。
また、脂肪はビタミンA・D・E・Kといった脂溶性ビタミンの吸収を助ける役割も果たします。脂肪が少なすぎると、これらのビタミンの吸収が妨げられ、皮膚トラブルや免疫力の低下につながる可能性があるため注意しましょう。
脂肪の量や質は、愛犬の体調や生活スタイルに大きく関係しています。多すぎれば消化器への負担に、少なすぎればエネルギー不足や皮膚トラブルの原因に。
原材料の種類や栄養バランスにも注目しながら、愛犬に合った脂肪設計のフードを見極めて選びましょう。
ドッグフードの「粗脂肪」表示だけでなく、使われている脂肪の種類にも注目しましょう。たとえば「鶏脂」「魚油」「亜麻仁油」などは比較的消化しやすく、皮膚や被毛の健康にも良い脂肪源です。
一方、「動物性油脂」「植物性油脂」などの表記は中身が不明瞭で、質のばらつきが大きい可能性があります。愛犬の健康を守るためには、“何由来の脂肪なのか”が明記されているフードを選ぶのが安心です。
「低脂肪=健康に良い」と思われがちですが、脂肪が不足するとエネルギー不足や皮膚のトラブルを招く可能性もあります。低脂肪フードは、膵炎の既往歴がある犬や、獣医師の指導がある場合に活用するのが基本です。
必要以上に脂肪を減らすと、たんぱく質や炭水化物とのバランスが崩れたり、嗜好性が落ちて食いつきが悪くなることもあります。フードの脂肪量は「低ければいい」のではなく、「その子に合っているか」が判断基準です。
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脂肪が多いと犬にとって何が問題ですか?
脂肪の摂りすぎは肥満や膵炎、高脂血症などの原因になる可能性があります。特に運動量の少ない犬やシニア犬では、代謝が落ちて脂肪をうまく処理できず、体調を崩すリスクが高まります。
フードの脂肪量は、犬の年齢・体型・体調に合わせて調整することが大切です。
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脂肪が少なすぎるドッグフードでも問題はありますか?
はい、脂肪が少なすぎるとエネルギー不足になり、体力の低下や被毛のパサつき、脂溶性ビタミンの吸収不良などが起こる可能性があります。脂肪は必要不可欠な栄養素であるため、過剰も不足も避けることが大切です。
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良質な脂肪とはどのようなものですか?
動物由来の鶏脂や魚油、植物由来の亜麻仁油など、自然な原材料から取れる脂肪は消化しやすく、皮膚や被毛の健康維持にも効果的です。
逆に「動物性油脂」「植物性油脂」などの曖昧な表記は、原料が不明確で品質にばらつきがある可能性があります。
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低脂肪フードはどんな犬に向いていますか?
膵炎の経験がある犬や、脂肪を制限するよう獣医師から指導された犬には低脂肪フードが向いています。
ただし、健康な犬には必ずしも必要ではなく、過度な脂肪制限が逆効果になることもあるため、自己判断ではなく状況に応じて選ぶことが大切です。
脂肪は犬の健康に欠かせない栄養素であり、エネルギー源や皮膚・被毛の健康維持など、多くの役割を担っています。
ただし、摂りすぎると肥満や膵炎の原因にもなるため、年齢や体調に合わせた量を見極めることが大切です。脂肪の種類やフードの原材料表示にも注目し、愛犬に合ったバランスの良い食事を心がけましょう。
低脂肪=安全というわけではなく、その子にとって必要な脂肪を適切に摂ることが、健康維持の第一歩です。