低血糖症とは、血中の糖分が何らかの理由で著しく低下してしまう病気のこと。主に糖分を必要とする脳へのダメージが大きく、低血糖の状態が続くと全身への栄養供給も不足していきます。
ここでは、犬の低血糖の原因や治療法、おすすめの食事内容について解説します。
血糖値が通常の範囲よりも低くなると、様々な症状が現れます。犬の体がエネルギー不足になるため、特に小型犬や若い犬に多く見られることがあります。
低血糖に陥ると脳の働きが鈍くなり、ぐったりとして動かなくなります。一時的な低血糖状態であればすぐに回復することもありますが、重症化するとけいれんを起こし意識を失ってしまうこともあります。
・元気がなくなる、ぐったりする
低血糖になると、犬はエネルギー不足で疲れやすくなり、普段よりもゆっくりになったり、ぐったりすることがあります。
・ふらつきや歩行の異常
低血糖により脳に十分なエネルギーが供給されないと、バランス感覚が乱れ、ふらふらした歩行や倒れるような動きが見られることがあります。
・震えやけいれん
特に小型犬は体温が下がりやすく、体が震えたり、筋肉が小さく刻みにけいれんする場合があります。
・行動の変化・混乱
血糖値が低いと脳の動きが鈍くなり、いつもと異なる行動を示すことがあります。ぼーっと反応が遅れたり、混乱したような様子が見られることもあります。
・食欲不振や嘔吐
低血糖によって消化機能が低下するため、食欲が低下したり、吐き気を催すことがあります。
・意識を失う・昏睡
低血糖が進むと、意識を失ったり昏睡状態に陥ったりすることもあります。このような状態になる前に、すぐに対処する必要があります。
低血糖症は、あらゆる犬種に起こりうる病気ですが、チワワなどの超小型犬の場合、頭蓋骨に隙間があるため成犬になるまでに低血糖症になりやすいといわれています。
子犬の場合はチワワ、ヨークシャーテリア、トイプードル、ポメラニアン、パピヨン、マルチーズ、ミニチュア・ダックスフンドなど、成犬になると逆に、ボクサー、ゴールデンレトリバー、スタンダードプードルなどの大型犬の発症率が高まります。
低血糖症は、犬の成長ステージによって原因が違います。また、糖尿病を患っている犬の場合、インスリンの過剰摂取によって低血糖症を起こすことがあります。
生後3ヶ月までの子犬は、体温の低下、空腹、栄養吸収の悪化などにより低血糖症を起こすことがあります。特に、食が細い場合、食事の量が足りないとすぐに低血糖を起こすので、栄養価が高く消化吸収の良い食事を与えるようにしましょう。
1日に3~4回と少しずつに分けることで血糖値の安定を図ることができます。ふやかすときには、体を冷やさないためにもぬるま湯を利用してください。
成犬が低血糖を起こす主な原因は、食事と運動の量にあります。激しい運動や長時間の運動でエネルギーが大量に消費されると、血糖値が急激に低下することがあります。
しっかりとご飯を食べていればいいのですが、量が少なかったり、低カロリーの食事が続くと血糖値が不安定になるので、運動量が多い愛犬の場合は注意してあげてください。
空腹時の運動を避けること、ストレスを軽減できる環境づくりを行うことで予防できます。カロリーの見直しも行っておくと安心です。
7歳以上の老犬になると、消化や吸収力が落ち、必要なエネルギー(糖)が体内にうまくとりこめない場合があります。
さらに、加齢により慢性的な疾患が増え、体力が消耗しやすくなることでも低血糖が起きやすくなります。とくに、インスリンを生成している膵臓に腫瘍ができると確率はさらに上がります。
普段から脂肪が少なく低カロリーでありつつも高品質で消化しやすいシニア向けのドッグフードを与えることで低血糖を予防することができます。あわせて、無理のない範囲での軽い運動も効果的です。
糖尿病時に注射するインスリンの量が過剰になると低血糖を起こすことがあります。ダイエット目的で糖質制限食を与えている場合には特に注意しましょう。
インスリンの過剰摂取により低血糖の症状が出てしまったら、速やかにハチミツや砂糖水を舐めさせるなどの対応をとってください。
低血糖症の治療は、糖分の摂取がメインになります。症状が軽い状態なら口から、意識がなくなっている場合には注射でブドウ糖を補給します。また、膵臓ガンが原因の低血糖症であれば、ガンの切除手術を行います。
特別な治療食というものはありませんが、消化吸収の良いドッグフードを与えることで低血糖を起こしにくくなります。
低血糖になりやすいワンちゃんには、空腹の時間を短くすることが大切ですので、1回の食事量を減らし回数を増やすと予防につながります。
消化吸収を良くしたい場合、以下の成分が含まれたドッグフードが適しています。これらの成分は腸内環境を整え、栄養の吸収効率を高めるのに役立ちます。
・高品質な動物性タンパク質
チキン、ラム、サーモンなど、消化しやすい動物性タンパク質が多いドッグフードを選ぶと良いです。良質なタンパク質は消化しやすく、腸内で栄養として効率的に吸収されやすいため、特にお腹の弱い犬にも適しています。
・プレバイオティクス(フラクトオリゴ糖やイヌリンなど)
フラクトオリゴ糖、イヌリンなどのプレバイオティクスは腸内の善玉菌のエサとなり、それにより善玉菌が増えることで腸内フローラが整い、消化吸収がスムーズに行われるようになります。
・プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など)
バイオプロティクスとして乳酸菌やビフィズ菌が含まれているフードもおすすめです。善玉菌を直接摂取することで腸内環境が改善され、下痢や便秘の予防に役立ちます。
・食物繊維
ビートパルプ、かぼちゃ、さつまいもなどの消化しやすい食物繊維は、腸の動きをサポートし、スムーズな排便を助けるため、腸内での栄養吸収が促進されます。
・消化酵素(パパインやブロメラインなど)
パパイン(パパイヤ由来)やブロメライン(パイナップル由来)など、消化をサポートする酵素が含まれていると消化吸収が助けられます。特に年齢を重ねた犬や消化が苦手な犬にとって、消化酵素が含まれることで消化活動がサポートされます。
・オメガ3脂肪酸(フィッシュオイル、亜麻仁オイルなど)
フィッシュオイルや亜麻仁オイルに含まれるオメガ3脂肪酸は、消化器官の炎症を抑える効果が期待できます。腸の炎症を助けることで、消化器官の負担が減り、栄養の吸収が良くなります。
・ビタミンB群(特にB12)
ビタミンB12や他のビタミンB群には代謝を助ける働きがあるため、体内で効率よく栄養が循環され、腸内での影響吸収を高めます。
・グルタミン
グルタミンはアミノ酸の一種で、腸粘膜の修復や保護に役立ちます。腸壁の健康が保たれることで、消化吸収がスムーズに行われるようになります。
栄養の消化吸収が良いドッグフードを3点ご紹介します。