椎間板ヘルニアとは、脊椎の間にある椎間板が損傷し、痛みを引き起こす病気です。
椎間板が圧迫されて脊髄が漏れ出す状態をハンセンⅠ型(髄核脱出型)、椎間板が膨らんだ状態をハンセンⅡ型(繊維輪突出型)と呼びます。ハンセンⅠ型の方が症状が重く、突然動けなくなることもあります。
今回は犬の椎間板ヘルニアのグレードごとの症状やレントゲン撮影、リハビリなどについてご紹介していきます。
椎間板ヘルニアは、症状が比較的明確な病気です。特に、歩行中に違和感を覚え、それがすぐに回復しない場合は、ヘルニアを発症している可能性があります。
・歩くスピードが遅くなったりよたよたするようになった
・段差や運動することを嫌がる
・体に触れたり抱きかかえようとすると離れる
・急に一瞬キャンと鳴いたり背中を丸める(痛みからくるもの)
・息が荒い
頚部付近にヘルニアが発生した場合、頭の後ろから胸部にかけて痛みが生じるため、首をうなだれたり上目遣いになったりするなど、その部位をかばうしぐさを見せます。また、リードを引っ張ることで首に負担がかかるため、散歩を嫌がることもあります。
重症化すると、膀胱や直腸の神経が圧迫され、排尿や排便に支障が出る(尿もれ、頻尿、量の調節が難しい、便秘、下痢など)ことがあります。
椎間板ヘルニアは、症状の重さによってグレード1から5の5段階に分けられます。グレードが上がるにつれて症状は重くなり、グレード4では脊髄神経が麻痺し、グレード5では全く動けなくなります。
グレード1 | 痛み |
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グレード2 | 運動障害、ふらつき(歩行は可能) |
グレード3 | 起立不能(歩行不可) |
グレード4 | 通常の排泄が困難 |
グレード5 | 深部痛覚消失 |
しかし、深部痛覚が消失した場合の改善率は50%以下とされています。ただし、改善率は症状や病院によって異なるため、詳細は獣医に確認する必要があります。
犬はぎっくり腰にもなる
犬も人間と同様にぎっくり腰を発症することがあります。これは急性腰椎症と呼ばれ、疲労によって引き起こされるもので、椎間板ヘルニアとは全く異なる病気です。安静にしていれば完治します。
椎間板ヘルニアは、遺伝的要因、外部からの強い衝撃、老化などが原因で発症します。遺伝的な要因を除けば予防が可能なため、適切な対策を講じることが重要です。
椎間板ヘルニアの主な原因とされるものをご紹介します。
ダックスフンドやコーギーは、椎間板ヘルニアに遺伝的にかかりやすいとされ、特に脊髄が飛び出すハンセン1型の発症率の方が高くなっています。発症のピークは、2~7歳頃になります。
段差の多い生活やすべりやすいフローリング暮らしなどで負担が蓄積しヘルニアを発症することがあります。また、高い場所からの落下や交通事故などの強い衝撃により一瞬で脊髄がとび出てしまうこともあります。
7歳を過ぎると圧力を支えていたコラーゲンの減少が始まり、ヘルニアを起こしやすくなります。
体にたまった脂肪が椎間板に圧力をかけ、大きな負担になります。ダックスフンド、コーギーは特に注意してあげてください。
ダックスフンド、コーギーの他に、マルチーズ、シーズー、プードル、ペキニーズ、コッカ―スパニエル、バセットハウンド、ラサアプソ、アイリッシュセッターなどは椎間板ヘルニアにかかりやすいといわれています。
オスよりメスの方が発症が多い傾向にあります。
椎間板ヘルニアは、飼育環境を整えることで予防が可能です。
例えば、「フローリングにマットを敷く」「段差をできるだけなくす」「カロリー調整フードを与える」「乱暴に抱っこしない」などの対策があります。特に、ヘルニアにかかりやすいとされる犬種には注意が必要です。歩き方に違和感を感じたら、早めに動物病院の先生に相談しましょう。
基本的に、犬が椎間板ヘルニアで命を落とすことはありません。そのため、椎間板ヘルニアに罹ったからといって寿命が短くなるわけではないので、安心してください。
しかし、深部痛覚が消失した重度のケース(グレード5)では、進行性脊髄軟化症などの合併症を引き起こし、死亡することがあります。
また、重度のヘルニアでは治る確率も大幅に低下します。そのため、悪化を防ぐための予防や早期治療が非常に大切になります。
手術後のリハビリ期間は数週間から2ヶ月程度必要です。痛みがひどい場合やグレード5での手術の場合、リハビリには半年以上かかることもあります。
椎間板ヘルニアは病院で治療して回復しても、負担が減らなければ再発する可能性が高い病気です。フローリングにマットを敷くなどの飼育環境の改善や食事管理を行い、再発防止に努めましょう。
手術後のリハビリや老化サポートとして、コルセットを使用すると犬の動きが楽になります。コルセットは病院で販売されているほか、楽天などのECサイトでも購入できます。
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