なんだか元気がない、食欲にムラがある…。そんな変化が続くとき、肝臓の不調が隠れていることがあります。「慢性肝炎」は犬にも多く見られる病気のひとつで、気づかないうちに進行してしまうことも。
この記事では、犬の慢性肝炎について原因・症状・数値・治療法・食事の工夫まで、飼い主さんが知っておきたい情報をわかりやすく解説します。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、不調があってもすぐには気づきにくい臓器です。犬の慢性肝炎は、さまざまな要因が絡み合って発症することがあり、体質的なものから感染症、薬の影響まで幅広い原因が考えられます。
ではまず、特に注意しておきたい代表的な原因をご紹介します。
一部の犬種では、体に銅が蓄積しやすい体質を持っており、それが慢性肝炎の原因になります。
たとえば、ベドリントンテリアやドーベルマン、ラブラドールレトリバーなどは注意が必要な犬種として知られています。肝臓に銅がたまり続けると、細胞が壊れて炎症を引き起こすことがあります。
慢性肝炎は、感染症や長期的な薬の使用が引き金になることもあります。
たとえばウイルス・細菌・寄生虫のほか、ステロイドや抗てんかん薬などが原因になることも。中には、明確な原因が見つからない「特発性」のケースも少なくありません。
慢性肝炎は、初期段階ではほとんど症状が現れず、飼い主さんが気づきにくい病気です。ただ、進行していくと少しずつ身体の変化が現れてきます。早い段階で異変に気づいてあげることが、治療を始める大きなチャンスです。
「最近ごはんを残すことが増えた」「散歩に行きたがらない」などの変化は、肝臓に負担がかかっているサインかもしれません。
慢性肝炎はゆっくり進行するため、体調の変化がじわじわと現れることが多く、最初は見過ごされがちです。飼い主さんの観察力がとても大切になります。
肝臓の機能がさらに低下すると、目の白い部分や皮膚が黄色くなる「黄疸」、お腹が膨れる「腹水」などの症状が現れることがあります。
これらは病気が進行しているサインであり、早急な治療が必要な状態です。こうした変化に気づいたら、すぐに動物病院で相談しましょう。
「肝臓の数値が高いですね」と言われても、何を意味するのかピンとこない方も多いかもしれません。慢性肝炎を見つけるうえで、血液検査による数値のチェックはとても重要な手がかりになります。
血液検査で最も注目されるのが「ALT(GPT)」という数値です。これは肝臓の細胞が壊れたときに血液中に出てくる酵素で、数値が高いほど肝臓に負担がかかっている可能性があります。
ただし、数値が高いからといってすぐに重い病気というわけではなく、経過を見ながら総合的に判断されます。
ALT以外にも、AST、ALP、GGT、ビリルビンなどの数値も合わせてチェックされます。特にビリルビンが高いと「黄疸」や胆道系のトラブルが疑われることもあります。
これらの数値の変化を継続的に追いながら、症状の進行具合や治療の効果を確認していくことが大切です。
「慢性肝炎って治るの?」という疑問を持つ飼い主さんは多いかもしれません。慢性肝炎は完治が難しい病気ですが、早期発見と適切な治療によって、症状を落ち着かせたり進行を遅らせることは十分に可能です。
慢性肝炎の治療では、肝臓の炎症を抑えるための薬や、肝細胞を保護する薬がよく使われます。
たとえば「ウルソ」や「SAMe(サミー)」といった肝保護剤、「シリマリン」などの抗酸化成分を含むサプリメントが処方されることもあります。原因によっては、ステロイドや抗生物質が使われる場合もあります。
一部の犬では、体内に銅がたまりやすい体質が原因で慢性肝炎を発症していることがあります。この場合は「銅キレート剤」と呼ばれる、銅を排出するための薬が必要になることがあります。
また、銅の摂取量を抑える食事療法も同時に行われることが多く、病型に応じた治療の選択がとても重要です。
慢性肝炎と診断されたとき、飼い主さんができる大きなケアのひとつが「食事の見直し」です。
薬だけに頼るのではなく、肝臓にやさしい食事を意識することで、愛犬の体調をサポートすることができます。
慢性肝炎の犬には、高品質なたんぱく質やビタミンE・C、亜鉛、タウリンなどの抗酸化成分が含まれたフードが理想的です。
また、脂質は控えめにすることで肝臓の負担を減らせます。消化にやさしいレシピや、穀物を控えたグレインフリーの設計も選択肢のひとつです。愛犬の状態に合ったフードを獣医師と相談しながら選びましょう。
せっかく良いごはんを与えていても、おやつの与えすぎや人間の食べ物を少し与えるだけで、肝臓への負担が大きくなることがあります。
特に脂っこいおやつや、加工食品、添加物の多いものは避けたほうが安心です。肝臓を守るには「食べすぎないこと」も大切なケアのひとつです。
慢性肝炎は放置すると、肝硬変や肝不全など命に関わる状態に進行してしまうこともあるため、寿命に影響を与える可能性がある病気です。
ただし、早期に発見して治療とケアを続ければ、穏やかに長生きできる子もたくさんいます。ここでは、寿命との関係や生活の工夫について解説します。
慢性肝炎は進行性の病気ですが、症状が軽いうちに気づいて適切な治療を受けられれば、何年も安定した生活を送ることができます。
実際に、治療と食事管理を丁寧に行うことで、5年以上元気に暮らしているケースも少なくありません。肝臓は再生能力がある臓器なので、あきらめずにケアを続けることが大切です。
定期的な血液検査やエコー検査で、数値の変化を追いながら対応することで、病気の進行を抑えやすくなります。
また、食べすぎ・運動不足・ストレスなどの日常的な要因も肝臓の健康に影響を与えるため、生活習慣を見直すことも寿命を延ばすポイントになります。
慢性肝炎の治療は、病院での診療だけでなく、日々の生活の中で飼い主さんができる工夫やサポートもとても大切です。体調を安定させるには、治療・ごはん・生活リズムなどを無理なく続けることがカギになります。
肝臓の状態は目に見えないことが多いため、定期的な血液検査やエコー検査で数値を追いながら経過を見ることが大切です。
また、食欲や元気、うんちの状態、行動の変化など、「いつもと違うな」と感じるサインを見逃さないことが、病気の悪化を防ぐ第一歩になります。
療法食や栄養管理はもちろん、愛犬がリラックスできる生活環境づくりも、肝臓の健康に影響します。
ストレスは体に負担をかけ、免疫力を下げる原因になるため、落ち着いた環境で過ごせるよう工夫しましょう。おやつの量や運動のバランスも、肝臓のサポートには欠かせないポイントです。
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犬の慢性肝炎は治るのでしょうか?
完治が難しい病気ではありますが、早期に治療と管理を始めることで、症状を抑えて元気に過ごせることは十分に可能です。再生力のある肝臓を支えるケアが大切です。
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肝臓の数値が高いと診断されました。すぐに治療が必要ですか?
数値が高いだけでは判断できませんが、原因を調べるための検査や経過観察が必要です。放置すると慢性化することもあるため、早めの対応が安心です。
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慢性肝炎でも市販のおやつを与えても大丈夫?
脂質や添加物が多いおやつは肝臓に負担がかかる可能性があります。できるだけ低脂肪・無添加のものを選び、量も控えめにするのがおすすめです。
慢性肝炎と聞くと不安になるかもしれませんが、早く気づいて対応できれば、愛犬とゆったりとした時間を過ごすことは十分に可能です。
肝臓のケアは、特別なことではなく、毎日の中で少しずつできることの積み重ね。食事や環境、ちょっとした変化への気づきが、きっと愛犬の力になります。
焦らずに、でも見逃さずに。大切なのは、「守ってあげたい」というその気持ちを、日々の暮らしの中でカタチにしていくことです。