
食欲がない、元気がない――そんな変化の裏に、肝臓の慢性的な炎症が隠れていることがあります。犬の「慢性肝炎」は、初期にははっきりした症状が出ないため、発見が遅れやすい病気のひとつです。
動物病院で治療が始まったとき、薬と同じくらい重要になるのが毎日の「食事管理」です。肝臓は体に入ってきた栄養の処理や解毒を行う臓器なので、食べ物の質がダイレクトに影響します。
この記事では、慢性肝炎と診断された愛犬に「絶対避けたいNGな食べ物」や、負担をかけないドッグフードの選び方、食欲がない時の手作りの工夫など、飼い主さんがお家でできる食事ケアについてわかりやすく解説します。
肝臓が弱っている犬には、健康な犬なら問題ない食べ物でも大きな負担になることがあります。普段のおやつやトッピングで以下を与えていないか、まずはチェックしてみましょう。
「栄養をつけてあげたい」と、手作りごはんやおやつで豚や鶏の「レバー」を与えようとする飼い主さんがいますが、慢性肝炎の犬には絶対にNGです。
実は犬の慢性肝炎の多くは、肝臓に「銅」というミネラルが蓄積して細胞を壊してしまうことが原因です。レバーは食材の中でもトップクラスに銅を多く含むため、肝臓にさらなるダメージを与えてしまいます。
肝臓は脂肪の消化を助けたり、添加物などの老廃物を解毒したりする働きを担っています。そのため、脂っこいお肉のジャーキーや、保存料・着色料がたっぷり使われた市販の安価なおやつは、弱った肝臓を過労させてしまいます。
おやつをあげるなら、後述する肝臓ケア用の療法食クッキーや、茹でたササミなど脂肪分の少ないものを少量にとどめましょう。
一部の犬種(ベドリントンテリア、ドーベルマン、ラブラドールレトリバー、ダルメシアンなど)は、遺伝的に銅を体の外に排出するのが苦手で、肝臓に銅が溜まる「銅関連性肝障害」を起こしやすいことがわかっています。
これらの犬種と暮らしている場合は、無症状のうちから銅を多く含む食材(レバーや豆類など)を与えすぎないよう、特に注意が必要です。
慢性肝炎のケアには、動物病院で処方される「肝臓用療法食」に切り替えるのが基本です。療法食には、普通のドッグフードにはない以下のような特殊な調整がされています。
先ほどもお伝えした通り、肝細胞を壊す原因になりやすい「銅」の含有量が厳密に制限されていることが、肝臓用フードの最大の条件です。市販の総合栄養食では銅の制限が難しいため、安易な自己判断でのフード選びは危険です。
お肉などのたんぱく質は、消化される際に「アンモニア」という毒素を出します。健康な肝臓ならすぐに解毒できますが、慢性肝炎の犬はアンモニアの処理が追いつかず、重症化すると脳炎(肝性脳症)を起こす危険があります。
そのため療法食では、たんぱく質の「量」は適度に抑えつつ、アンモニアが出にくい「非常に消化吸収が良い高品質なたんぱく質」が使われています。
肝臓の細胞がこれ以上壊れないよう守ってくれる「ビタミンE」や「ビタミンC」といった抗酸化成分が強化されていることも重要です。また、「亜鉛」は腸から銅が吸収されるのをブロックしてくれる働きがあるため、肝臓ケアに欠かせない栄養素です。
獣医師がよく処方する、肝臓の負担を減らすための代表的な療法食をご紹介します。

銅の含有量を制限し、アンモニアの発生を抑えるために消化性の高い植物性たんぱく質(大豆など)を主原料に使用しているのが特徴です。抗酸化成分や亜鉛もバランスよく配合されています。

こちらも銅を制限し、高品質なたんぱく質を使用した定番の療法食です。傷ついた肝臓の組織を修復するために必要な栄養素が強化されており、多くの動物病院で推奨されています。
「療法食を食べてくれないから」と、市販のシニア用フードやダイエットフードに切り替えるのはおすすめできません。脂肪分は低くても、銅が制限されていなかったり、たんぱく質の質が肝臓向けでなかったりするからです。
フードを変更したい場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談しましょう。
慢性肝炎が進行すると、吐き気やだるさから「ごはんを全く食べてくれない」という悩みがよく起こります。食べて体力をつけるための工夫をご紹介します。
ドライフードを食べない時は、同じ療法食シリーズの「ウェットタイプ(缶詰)」を少し温めて混ぜてみてください。香りが立って食いつきが良くなります。
また、脂肪分が少ない「鶏むね肉」や「白身魚」をほんの少しだけ茹でてトッピングするのも有効ですが、与えすぎはたんぱく質の過剰になるため、量は獣医師に確認してください。
市販の療法食をどうしても食べない場合、「手作りごはん」で対応したいと考える飼い主さんも多いでしょう。
しかし、肝臓病の食事は「銅の制限」と「良質なたんぱく質の確保」のバランスが非常に難しく、素人判断で作ると逆に寿命を縮めてしまうリスクもあります。
手作り食に挑戦したい場合は、独自のレシピではなく、必ず獣医師の指導のもとでメニューを組むことが大切です。
手作り食の基本的な注意点については、[手作りドッグフードの作り方]も参考にしてください。
シニア犬の場合、肝臓だけでなく「腎臓」も同時に弱っている(腎不全を併発している)ケースが少なくありません。肝臓と腎臓はどちらも「たんぱく質の制限」が必要になるなど、食事療法に共通点があります。
ただし、どちらの数値を優先してフードを選ぶべきかは血液検査の結果次第です。腎臓ケアの食事管理についても知っておきたい方は、[犬の腎不全の食事管理]もあわせてご覧ください。
慢性肝炎のケアには、SAMe(サミー)やシリマリンといった、肝臓の働きを助けたり細胞を保護したりする成分も有効です。
しかし、これらを毎日のドッグフードだけで十分に摂取するのは難しいため、犬用の肝臓サプリメントを併用してあげるのもおすすめです。いつものごはんに粉末を振りかけたりするだけで、手軽にケアの質を高めることができます。
肝臓をサポートする成分の詳しい働きや、おすすめのサプリ選びについては、[犬の肝臓ケアにおすすめのサプリメント]の記事も参考にしてください。
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栄養をつけるために「ササミ」を多めにあげてもいいですか?
ササミは低脂肪で消化も良いですが、たんぱく質が非常に豊富です。慢性肝炎の犬にたんぱく質を過剰に与えると、アンモニアの解毒が追いつかず肝臓に負担をかけるため、メインの食事ではなく「ほんの少量のトッピング」程度にとどめましょう。
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療法食はいつまで続ける必要がありますか?
慢性肝炎は完治が難しく、生涯にわたって付き合っていく病気です。血液検査の数値(ALTなど)が正常に戻っても、元の食事に戻すとすぐに再発・悪化するケースが多いため、基本的には療法食を一生涯続けることになります。
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おやつは何をあげればいいですか?
療法食メーカーが出している「肝臓疾患用のおやつ(トリーツ)」を選ぶのが最も安全です。どうしても市販のものをあげる場合は、銅が多く含まれるレバーや豆類を使ったものは避け、低脂肪で無添加のものを選びましょう。
犬の慢性肝炎は、目に見えないところで進行する怖い病気ですが、毎日の食事管理によって進行を遅らせ、穏やかな時間を長く過ごすことは十分に可能です。
愛犬の「食べたい」という気持ちに寄り添いながら、負担の少ない食事で肝臓を優しくサポートしてあげてくださいね。

こんにちは、愛犬ごはんノート編集部 minamiです。現在は柴犬のムギ(9歳)とザネ(7歳)と暮らしています。
ムギは子犬の頃から皮膚が弱くアレルギー性皮膚炎があり、ザネは内臓が少し繊細。日々の食事が体調に大きく影響するので、これまで20種類以上のドッグフードを試してきました。
成分や原材料について調べるのが趣味のようになり、自分なりに学んだことや、実際に愛犬に与えてきたフードの体験談をこのサイトでご紹介しています。
愛犬の健康に不安がある方や、どのフードを選べばいいか悩んでいる方にとって、少しでもヒントになればうれしいです。
運営者名:愛犬ごはんノート編集部 minami
愛犬の食事管理歴15年以上、20種以上のフード比較経験。
参照・取材方針:公的機関・学術資料を一次情報として優先し、体験談とは区別して解説します。
本記事は一般的情報であり、診断・治療の代替ではありません。医療判断は獣医師へ。