脂質(脂肪)というと、肥満を連想して「なるべく摂らない方が良いもの」と思いがちですが、実は脂質は3大栄養素の一つで、犬にとって非常に重要な役割を果たしています。
もちろん過剰摂取は良くないですが、脂質が不足すると体力の低下や生殖機能の低下などの問題が生じることもあるため、過度な制限には注意が必要です。
今回は、重要な栄養素の一つである「脂肪」についてお話ししたいと思います。
脂質の一番の働きは、体を動かすエネルギー源になること。脂質は1g9kcalあるので脂質が多く含まれるドッグフードはカロリーも高くなります。
また、脂質には脂溶性ビタミンA、E、D、Kの吸収を高める働きがあるため、効率よく栄養素を取り入れることが可能になります。具体的には、最低でも1~2%程度は脂質が含まれているドッグフードを選ぶようにすると良いでしょう。
さらに、食欲を増進させるというのも脂質の大きな働きです。犬の嗜好性を高める役割として代表されるものはタンパク質ですが、油独特のにおいや口当たりがよくなることから脂質を好む犬も多くいます。
AAFCOの基準では、ドライフードにおける成犬の健康維持に必要な最低粗脂肪量を5.5%以上、成長期の子犬や繁殖時の必要量を8.5%以上と定めています。
肥満予防のためには過剰摂取を避けたいところですが、上限については明確な基準が設けられていないのが現状です。実際、市販やインターネットで販売されているドッグフードの多くは、脂肪含有量が11~15%です。
基準値を設定するなら、これくらいの数値が参考になります。低脂肪とされるドッグフードでは、脂肪含有量が5%前後、平均では6~7%のものが多く見られます。
前述の通り、脂質は犬の重要なエネルギー源であり、不足するとまず体力の低下を引き起こします。特に健康上の問題がないのに元気がない様子が続く場合は、脂質不足を疑ってみてください。
また、脂肪は細胞膜やホルモンの構成成分でもあり、これが不足すると赤血球の減少や生殖機能の低下、血管や組織の劣化などが生じます。犬によっては、毛艶が悪くなるなどの目に見える変化が現れることもあります。
これは人間にもよく見られる症状で、すぐにわかる方も多いと思いますが、最も顕著なのは肥満です。肥満自体はそれほど恐れるものではありませんが、動脈硬化や心筋梗塞を引き起こす可能性があるため、「最近少し太ったかも」と感じた時点で対策を講じることが重要です。
肥満が進行してからのダイエットは、犬にも飼い主にも負担が大きいため、日頃から体重管理をしっかり行い、肥満予防を心がけることをおすすめします。
肥満以外に、脂肪過多が引き起こす病気の一つに急性膵炎があります。市販のドッグフードは一般的に脂肪消化率が90%とされていますが、犬の消化能力を超える脂肪を摂取すると脂肪便となり、これが急性膵炎を引き起こすことがあります。
発育期や授乳期には多くの脂肪が必要ですが、成犬になっても同じようなフードを与え続けると負担がかかるため、適切な時期にフードの切り替えを行うようにしましょう。
脂質もタンパク質と同様良質なものとそうじゃないものがあるのをこ存知ですが?このサイトでも何度も書かせていただいていますが、ドッグフードを選ぶときはまず栄養成分、原材料をチェックしてください。
脂質の場合には、どんなものが使われているか原材料の部分をチェックすることが大切です。
良質な脂質って具体的にはどんなもの?
脂質にはいろいろな種類がありますが、特におすすめなのが魚に含まれる脂肪酸です。人間にも良いものとされていますが、犬の場合は特に脳や網膜を活性化するといわれています。
魚に含まれるオメガ3脂肪酸には、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、α-リノレン酸、オメガ6脂肪酸には、アラキドン酸やリノール酸が含まれ、栄養学的には積極的に摂取することがすすめられています。
良質な脂質は魚の他に亜麻仁油やエゴマにも含まれています。
ミニチュアシュナウザーなどの犬種は高脂血症になりやすいため、脂質の過剰摂取には特に注意が必要です。
また、どれほど良質な脂質を含んでいても、管理方法が不適切だったり、賞味期限を大幅に過ぎていたりすると、脂質が酸化して劣化することがあります。
パッケージに記載されている正しい保管方法を、少々面倒でもしっかり守るようにしましょう。